高知地方裁判所 事件番号不明 決定
被告人 少年 T(昭一七・一・二〇生)
主文
本件を高知家庭裁判所に移送する。
理由
本件公訴事実の要旨は、被告人はMと共謀のうえ、昭和三四年九月二八日午後九時三〇分頃自動三輪車に乗車して高知県○○郡××町△△△西方の国道上を進行中、附近を通行中のH子(当一八年)を認めるや劣情を催し同女を強姦しようと企て、「家迄送つてやると甘言を弄して同乗せしめ、○○郡××村△△の県道上に連行し、右Mにおいて同女を車外に引摺り下して「声を立てたらお前の恥ぞ黙つて俺の言う事を聞け」と脅迫して同女の反抗を抑圧し、右M、被告人の順で順次同女を強いて姦淫し、因つて同女に全治六日間を要する処女膜裂傷を負わせたものである。と云うのであつて、右事実は被告人において自供するところであり、当裁判所は本件記録添付の各証拠により証明十分であると認められる。
本件犯行は極めて悪性で結果も重大であつて、軽視さるべきものではなく、又社会的反響もあつて、一般予防的見地から家庭裁判所においては、本件を検察官に送致したものと思料せられるが、当裁判所は慎重に審理した結果被告人については次のような情状が認められる、即ち
一、被告人は昭和三二年三月高知県○○郡の××中学を卒業後、同県立○○高校に入学したが、翌三三年六月頃学業を嫌悪して同校を中退し、同年一二月頃岡山県○○市××△△千△百△十△番地○○被服工場で働くようになつたが、昭和三四年九月初頃仕事に嫌気がさしたのと、家族から帰つて来て船員にでもなれと言われたため右職場をやめて肩書地の住居に帰り、ぶらぶら遊んでいたもので本件犯行はこの間に発生したものである。
二、被告人の住居地附近は約七、八〇戸密集した半商半漁の港に面した部落であるが他から前科者不良少年等の犯罪性ある或いは不道徳の者が集り、環境は極めて悪く、被告人は少年であり乍ら喫煙したりパチンコ店等に出入りし、又共犯者であるMとは中学の一年先輩で被告人の近隣に度々遊びに来る関係から知り合うようになり、共に雑談したり通行中の女性をからかつたりしていたもので、さらに親許を離れ、前記○○被服工場で働いている間にも同年配の女性二名と五、六回位の性交経験を経ている事情が認められ、平素の素行、交友関係もよくない。
しかも被告人の少年調査記録中の鑑別結果通知書によれば被告人の知能性格については、限界級(IQ=七三)で思慮浅薄、軽卒な行動や被影響的行動と結びつき易く、意志薄弱にして自主性に乏しく被影響追随性が認められるのである。
三、次に被告人の家庭も、父R(現在六一才)は機帆船の船長をしており、母S子(現在五七才)は干漁の行商を営み、それぞれ仕事の関係で留守勝と思われるが、家には兄U(現在二八才)が病気療養のため居るのみで(他の兄弟姉妹について詳細不明)被告人に対する養護監督についても十分でないことが窺知できるのである。
四、被告人は本件犯行当日Mに誘われて同人の運転する自動三輪車に同乗し、○○郡××町に遊びに行きその帰りに被害者H子を見かけたのであるが、本件犯行もMから「やるか」と持ちかけられてこれに追随したもので、Mが最初被害者を強姦する迄は自らは積極的に暴行、脅迫の挙に出ることなく単に車の荷台から見張りをしたのみで同人の積極性につられて本件犯行に及んだことが認められるのである。
なお、犯行後被告人側より被害者に対し深く陳謝すると共に慰藉料としてMと共に金五万円を送り、被害者も現在被告人を宥恕しかつ寛大な処分をされたい旨を述べている事情にあるので、本件犯行の罪質上被害者の心情は当然被告人の処遇上無視出来ないものと考えられる。
以上の如き諸事情から考察すれば、被告人が本件犯行を犯すに至つたのは前記の如き家庭、交友関係等の環境とその追随的な性格に起因するものと云うべく、何等かの適切な処遇は必要であるが被告人が未だ一七才一一月で犯行に際し従属的であつたこと及び被害者の感情の宥和した点に被告人がこれまで前科がなく非行等により保護処分に付されたことのない事情等を斟酌すれば、被告人に対し刑事処分に付するより家庭裁判所においてなお一層調査のうえ適確な保護処分に付するのを相当と認め、少年法第五五条により本件を高知家庭裁判所に移送することとする。
よつて主文のとおり決定する。